「乳酸が溜まって筋肉がパンパン」なんてよく聞きますよね。

乳酸

 

主に筋トレや短距離ダッシュなどの、有酸素運動とは反対の無酸素運動においてこの乳酸は発生し、長らく疲労物質として知られており、今もそう疑わない人も多くいます。

 

しかし実は、乳酸は疲労物質ではないという事実が明らかになってきました。

 

そもそも乳酸自体、私たちは直接見たわけでもないのに勝手に疲れの原因物質と決めつけていたわけですよね。無実なのに犯人扱いしてしまって、乳酸には合わせる顔もありません。

 

じゃあなぜ乳酸が発生するのか?そして乳酸が疲労物質ではないとすると真の疲労物質は一体何なのでしょうか?それについてお伝えしたいと思います。

 

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なぜ乳酸は疲労物質として知られるようになったのか

乳酸が疲労物質として知られるようになったのは1929年に発表された、イギリスのアーチボルドビビアン・ヒルによる論文がきっかけでした。

 

アーチボルド・ヴィヴィアン・ヒルはカエルの筋肉で疲労に関する実験を行い、疲労による筋肉の収縮力の低下と、乳酸の蓄積量が比例関係にあることを示しました。

 

疲れた時に乳酸が増える→乳酸が疲労の原因となる物質である という結論ですね。一見正しい理屈に見えます。しかし、「疲労しているから乳酸が増えた」という可能性は考慮しなかったのですね。この辺りはアーチボルド・ヴィヴィアン・ヒルがすでにノーベル賞受賞者であったという”権威”の力もあったのでしょうか。

 

しかし実際には、ラットによる実験において乳酸を投与しても疲労することはなく、動きになんの支障もなかったことが証明されました。

 

それどころか、実は乳酸は疲労を回復させる物質であるという研究成果が発表されました。2001年に Nielsen らが提唱したものがきっかけでした。1929年に乳酸が疲労物質と発表された歴史を考えれば、本当にごく最近のことですよね。

 

これは、わかりやすく言うと

ある人が病気か何かで突然倒れてしまって、そこに偶然居合わせた人が心臓マッサージや人工呼吸などの応急処置を施したが、そこに後からやって来たさらなる第三者がその介抱してくれている人を犯人と思い込んでしまった

と言った具合でしょうか。

 

考えてみれば、乳酸菌飲料などは体に良いという風に言われていたのに、「乳酸は疲労物質」とも言われていて乳酸は体に良いのか悪いのか矛盾しているな~ってところありましたよね。しかし、乳酸は晴れて「体に良い物質」として名を連ねることになりました。

 

乳酸の本当の役割

運動(主に無酸素運動)をすると乳酸が多くなります。これは筋肉のエネルギー源である糖が分解されて生じるものです。

 

これは筋肉中の糖を使いきった際の代替エネルギーとして発生するものです。

 

無酸素運動というと、強い運動に使う筋肉である速筋をイメージしがちですが、乳酸は速筋だけでなく遅筋、心筋、さらには脳のエネルギーにもなるのが乳酸です。脳のエネルギーにもなるというのは驚きですね。よく「グルコースは脳の唯一のエネルギー」と言われますが、脂肪から作られるケトン体に加えて乳酸もエネルギーに出来るのです。

脳

 

正確に言うと、乳酸から作られるピルビン酸がクエン酸回路に取り込まれてエネルギー源になるという仕組みですね。

 

真剣にスポーツをやっている人にとって重要なものにLT値というものがあります。これは乳酸閾値(にゅうさんいきち・にゅさんしきいち)というものですが、ざっくり言うと「これ以上の強い運動はきつくて出来ない!」という限界点のことです。

 

強い運動をしている際には脂肪をエネルギー源にしても間に合わないのですが、糖から出来るエネルギーは即効性があるので強いエネルギーを作り出すのに向いているというわけなのです。しかし、体の限界を超えた運動をすると体の乳酸の量は急激に増え、処理が追いつかなくなってしまいます。

 

まあ、一般の人にとっては「脂肪をエネルギーに使ってダイエットしたい」というのがほとんどでしょうが、アスリート思考でスポーツをしている人にとってはいかに乳酸を効率良く使えるか、というのも一つの指標になるわけですね。

 

さらに言うと乳酸は成長ホルモンの分泌を盛んにする働きも持っています。成長ホルモンが分泌されると臓器の細胞分裂を活発にする、筋肉の増量させる、三大栄養素の代謝を高めるダイエット効果など体にとって良いことづくめの効果が期待できるというわけです。

 

そういえば、「乳酸がたまると筋肉痛になる」というのも乳酸が疲労物質として知られていた時代の”負の遺産”として存在していますね。しかし、乳酸というのは体に溜まるということはなく、運動をしても数時間ほどでなくなってしまうので翌日の筋肉痛とは全く関係がありません。

 

筋肉痛の原因というのはブラジキニン(BK)、神経成長因子(NGF)などが関与しているというのが最近の定説ですね。

 

本当の疲労物質とは?

 

長らく疲労物質と考えられてきた乳酸は無罪判決を受けたわけですが、なら疲労の真犯人は一体何なのでしょうか?

 

東京慈恵会医科大学の教授、近藤一博氏の研究グループによると、マウスに激しい運動をさせた後で血液を調べたところ特定のタンパク質が増加しているのがわかりました。

 

さて、どこかで聞いたような話ですね。これだけではこのタンパク質を疲労物質と決めつけては乳酸と同じ轍を踏むことになります。当然、「そのタンパク質を投与したらどうなるか」という実験もマウスで行われましたが、動きが鈍くなったことが観測されました。

 

晴れてこのタンパク質こそが疲労物質という結果が得られ「Fatigue Factor(FF)」(疲労因子)というそのままの名前がつけられました。

 

この他にも、運動をすると水素イオンが発生して体が酸性に傾くことが疲労の原因と考えられています。

 

うーん、この辺りはまだ疲労物質の研究も途中ということでしょうか。もしかしたら上記のFF以外にも真の疲労物質が見つかるということもあるかもしれませんね。とりあえずFFを投入することで運動が鈍ったという実験から、疲労物質という説が有力でしょう。



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